社会とつながるリアルな学びの実現に向けて

本ブログの趣旨は以下の2点である。(1)社会とつながるリアルな学びを実現する授業の構想と整理の場の確立(2)社会とのつながりの構築

アイデアを生み出す方法

 前年度の実践の課題をどう打開するかということをじっくり考えてきたが、そのパズルのピースが2週間ほど前に全てつながった。タイミング的にも今がちょうどいいと思い実践した。本筋の授業とは異なる展開に1コマ(+家庭学習)時間を設けた。

 前年度もこの時期あたりから、町家でどのような体験ができるかについてアイデアを出していった。出てきたアイデアについてはおもしろいものが多くあったが、そもそも偶発的なものが大半を占めていた。つまり、アイデアを生み出す方法については別段示すことなく、子どもたちに全てを委ねていた。何らかのアイデアを生み出す方法や法則が示せていればもっと違ったアイデアが出てきていたのではないかと悶々としていた。だが、アイデアを生み出す方法などそもそも自分が習ってきていないので、こういうものはあるのかと2ヶ月程度書籍を当たってきた。様々な書籍の中で、以下が非常に参考になり、これを授業のベースの一つとして子どもたちに示すこととした。

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※書籍を参考に作成

 ただし、これを示すだけでは児童が具体的に考えることはできない。ずっと、この考え方を具体に落として考える事例がないかを探していたが、ある時、Facebookのタイムラインのニュースで取り上げられていたものが目に止まった。東京の老舗銭湯がリニューアルしたというニュースである。

www.fashionsnap.com

黄金湯が行ったこと

  1. バーカウンターの設置「たし算」
    従来の牛乳や瓶コーラなどの飲み物加え、アルコールを置く
  2. 壁絵の変更「ひき算」
    典型的な銭湯のゴージャスな壁絵からシンプルな富士山絵巻に変更
  3. 宿泊施設「かけ算」
    異なる領域(銭湯と宿泊)をかけあわせる(現時点では未実施)
  4. DJカウンターの設置「わり算」
    ラジオからDJブースへ(ラジオなどのレトロなものを逆転)
    ※ここがちょっと苦しかったかもしれないが…

 この事例をもとに授業をすることとした。まず、四則演算に基づいてアイデアを生み出す方法を示し、その後、黄金湯が4つのアイデアのうちどの方法で客数を増やしたと思うかと問うた。この時点では、正解が4つであるということは述べていない。どれを行ったかについて議論する中で、そのアイデアの奥にあるターゲットの存在に気づいていくこととなる。これもねらいとしていた。近江町市場を活性化するアイデアを考える際には、ターゲットのことを考える必要がある。このことに気づいてほしかった。あーでもない、こーでもないと議論しながら、授業はオープンエンドとした。

 そして週明けに、黄金湯のニュースを視聴した。「結局、答えは全部だった」というオチもあり、子どもたちの心には深く刻まれたようだ。この四則演算の考え方を今後、生かしていってほしいと考えている。

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児童のふり返り

  • イデアを生み出すことについて知りました。もしネットですぐ調べていたら、どうしてそうなるのかということを考えていなかったと思います。(途中略)今回みたいに考えることができたのは式のおかげです。それとみんなで考えたからです。これからもこれを使っていきたいです。
  • 今回は、アイデアを考える時、「+−×÷」を使えばいいということを学びました。先生が答えを教えてくれると思ったのに、「来週いいまーーす」と行った時、ちょっといらっとしました。答えは何なのか、休みにじっくり調べました。

 

理由の検証

 どっぷり学習で浸かっていることもあり、本学級の子どもたちは近江町市場が大好きである。「なんで行かんのかが分からん!」という発言があったように、素朴に観光客数の方が多いということについて強く疑問に思っているようだ。

 そこで、地元客近江町市場にあまり地元客が行かない理由を洗い出すこととなった。先週の授業の最後に、どうやって調べるかを話し合ったところ、「このまえ、社会の授業の時に取ったアンケートがあるやん!」という発言が出た。社会における販売の授業の最後には、「やはり、近江町市場ではたらく人々は多くのお客さんに来てもらうためにたくさんの工夫をしていた」とまとめた際に、「でも、うちのクラスでは全く行っていない!」という発言から、単元導入時のアンケートに立ち返り、「行かない理由を調査してみよう!」ということになっていた。

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 質問項目は、「どうして近江町市場に買い物に行かない理由は何か」である。子どもがおうちの人が行かない理由を考え、自由記述形式ではなく、選択式(複数回答可)のもとGoogleフォームでアンケートを行った。このアンケート結果を授業で確認した。

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 結果、「遠い」、「そもそもあまり知らない」が上位を占めていた。授業参観であったこともあり、参観していた保護者の方にここにはない思いを語ってもらった。また、授業最後には、以前の日記の中で、「アンケートだけ信じたらだめだと思います」と書いていた子を指名し、その理由を全体で共有した。その理由は、(1)おうちの人の数だけだから少ない、(2)自分たちが考えたもの以外の理由もあるかもしれないというものであった。

 翌日、隙間時間を使ってどうするかを話し合ったところ、自由記述のアンケートを取ることとなった。学校長に許可を取り、学年保護者にアンケートを取りに行くようなアイデアが出るなと思っていたが、これはその通りだった。ただ、そのあとで、「数がほしいんだったら、おうちの人に言って友達に広げてもらったら早いと思う。」という意見が出た。子どもだけでなく、自分自身も、乗ってみるかと思い、その案でアンケートを取ることとした。アンケート作成チームをつくり、細々としたことを休み時間に終わらせた。コケることも大切なので、「そこまで集まらなかったら、また次の方法を考えようね」と伝えていたが、結果的に2日で72件も集まった。次回はこのデータの分析を行う。(なお、子どもの保護者より外に出るということを考え、振興組合理事長の許諾は得ている。)

 子どもたちが真剣になって、「自分たちなりに何かできることはないか」という思いのもと取り組んでいるので、こちらもできる最大限のことはやっていきたい。

大目標の達成と達成のための道筋

 今年度はスタートが約2ヶ月遅れたこともあり、先週やっと大目標の設定とその目標達成のための道順を共有することができた。

 特に学習計画を考える際には、こちらの想定をはるかに超えてきていた。昨年度の総合のことを引き合いに出し、発言する児童が多く、思わずこっちも舌を巻いた。

 「みんなは一生懸命考えているけど、市場の人にとってはいわゆる外野が勝手に言ってることだから、承諾は取らないといけないし、それが筋だ」ということを後半に伝えようと思っていたが、このことは4年児童から出てきた。まずは、市場で一生懸命はたらいている人に自分たちの思いを知ってほしいとのことである。

 子どもたちには、言ってはいないが、彼らの純粋な思いと市場で実際に働く人にギャップがあるかもしれない。この点は本当に未知数だし、最大限配慮が必要だと思う。この点が今年の授業で特に難しい点の一つである。

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大目標

これまで近江町市場にあまり行っていなかった地元客を呼び込む、そして盛り上げる

学習計画

  1. なぜ地元の人が近江町市場に来ていないかを明らかにする
  2. これまで近江町市場が地元客に来てもらうためにしてきたことを調べる
  3. イデアを考える
  4. 許可をもらう
  5. 実行する

ふり返り

  • 目標に向けてこれから頑張っていこうと思いました。個人でどんなことをすればいいかアイデアを出し、似ているメンバーで集まったり、相談しながら最後には近江町市場の振興組合やビジョン委員会の方にプレゼンしたいです。
  • 目標達成のための道が見えたので、一安心しました。次は、(社会の時にとったGoogleフォームでとった)保護者アンケートを確認して、地元客があまり来ない理由をはっきりさせたいです。

 

 

GT来校

 自分たちだけで解決できないことが出てきたこともあり、GTを教室にお招きした。夏休みに数名の子どもが近江町市場商店街振興組合に直接伺っていたこともあり、その子どもから、ぜひ招きたい人がいるということで振興組合の職員の方に来ていただくことになった。(今回は、簡略化して記載する。)

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 市場で働く人々や市場を支える人々は、地元の客に来てほしいと思っているけど、実際には観光客の方が圧倒的に多いということを確認できたことが大きな成果であった。

発表内容の確認&リサーチチーム補足

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 4回にわたるプレゼンチームの発表を模造紙に整理し、プレゼンチームが発表準備をしている間にリサーチチームが調べていたことの補足説明をする時間を設けた。「自分のノートにはハテナはメモしているけど、みんなはどんなハテナがあるか整理したい」という声があがったこともあり、確認することとした。

 これまでと異なるところは、店舗同士のつながりに関して疑問をもつ子どもが複数いたということだ。”同じ商品を扱う店で喧嘩にならないのか”、”全店舗で共通の取り組みはないのか”、”お店同士で協力しあっていることはあるか”、”イチバのハコにはどうして4店舗しか参加していないのか”といったところである。これまで近江町市場に関しては点でしか見てこなかったが(これなかった)、社会科における横断的な学習により、点と点を結びつつあるように思う。

 これらのハテナをどう解決するかと問うと、近江町市場の方に来ていただくとのこと。自分たちだけではもはや解決できないらしい。このあたりの判断もよくなってきたように思う。一人の子が、土日に振興組合の職員の方にアポを取りにいくと言っていた。行動力が素晴らしい。また、以下は児童のふり返りである。こっちが構想としてもっていたものと同様のものがあった。昨年度からいる子なので、それだけ総合の流れが身についているのかなと感じた。

  • 知れば知るほど、疑問は出てきてきりがないので、(去年みたいに)近江町市場の客数を自分たちで増やそうなどの目標を立てて行動をしていければいいなと思います。
  • 今日、あらためて不思議に感じたのはお店同士のつながりだ。ここのところは、実際にお店の人に聞いてみたい。

追記

 社会科では近江町市場の一つの店の商品に特化して、「他地域や外国との関わり」について調べている。「どうして地物を揃えているのか」、「同じ商品でも時期によって仕入れているのはどうしてか」について、社長に電話で聞くこととなった。2つを聞く予定だったが、総合の授業で話題にあがっていた”同じ商品を扱う店で喧嘩にならないのか”はどうしても聞きたいということで、急遽質問した。「競いあうことでよい店にになっていく」という回答に当初は、”?”という子もいたが、あらためてじっくり確認すると、「すげーー!」という歓声が聞こえた。社会科のふり返りはこのことが大半をしめていた。社会のねらいとは外れているが、それだけ印象に残ったのだろう。これがきっと他の場面でもつながっていくことになると思う。

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プレゼンチーム発表②

 当初は3コマを計画していたが、一人一人の発表のあとの質疑応答・感想のフィードバックに時間がかかっていたこともあり、追加で1コマ(合計4コマ)が必要となった。ちなみに、子どもたち曰く、”へぇ〜”や”ハテナ”だけではなく、”やっぱり”があるとのこと。

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 前回の記事でも述べたように、今回の発表でも社会科とのリンクがかなり見られた。子ども自身もそのことを感じているように思う。

 また、今回、非常におもしろかったのは、一人の発表を起点として情報の蓄積から課題解決に至ったという点である。近江町市場では熱中症対策で氷柱を置いているが、ある子がそのことを工夫として取り上げた。その取り上げられた氷の中には、花が入っていた。その後、自分もその氷を見たという子4人が、タブレットで撮影してきた写真(写真2〜5)を全体に示した。「なんでこんな氷の中に物をいれとるんかな?」という素朴な疑問から、あーでもない、こーでもないの議論があり、最終的には、証拠の写真(写真6)を見せながら、「コロナ対策で触ることができないから、お客さんが目で見ても楽しめるようにしているのではないか」という結論に至った。

(写真は後日アップ)

 例年、このような展開では、実際に見た子とそうでない子に温度差が生まれる。だが、証拠の写真があることで、共通の土台が確立された。場面だけ見ると、小さなことかもしれないが、大きな一歩だったように思う。タブレットを自宅に持ち帰らせているからこそできた。こんなことが他にも生まれるように期待するとともに、何かシステムを構築したい。

プレゼンチーム発表①

 プレゼンチームに所属するメンバーが独自に調べてきた内容をそれぞれ発表する。13名がプレゼンチームに所属しているため、約3コマ必要である。現時点では、2コマが終了し、9名が発表を終えた。教室後方部のプロジェクターで発表し、それぞれの発表内容を板書に位置付けておいた。

 また、単なる発表で終止しないために、なんのために仲間の発表を聞くのかを確認した。「総合では、分かったことから新たなハテナが生まれてくる」という反応を受け、仲間の発表から自分の中で「へえー」と「はてな」をはっきりさせるということを聞く目的とした。なお、発表終了後には、内容に関するフィードバックの時間を確保した。このことの重要性については、学習指導要領にも明記されている。

報告の場として,学年や学校全体でどのように学んできたか,それに よって何が分かったのかを共有する場面が想定される。参加者全員の前で行うプ レゼンテーションや目の前の相手に個別に行うポスターセッションなど,多様な 形式を目的に応じて設定することが考えられる。その際,報告することを探究的 な学習の過程に適切に位置付けることが大切である。  そこでは,発表の工夫をさせると同時に,聞いている児童にも主体的に関わら せることが重要である。例えば,発表者となる児童が要点を絞って伝えるための 図や表の活用,視聴覚機器やプレゼンテーションソフトウェアなどをツールとし て利用することなどが考えられる。聞いている児童には発表内容を深め,問題点 50 第4章 指導計画の 作成と内容 の取扱い に気付かせる「よい質問」をしたり,発表者の学習成果を改善させるアドバイス をしたりすることを目標とさせるなどの工夫が考えられる。その上で,発表後の 時間を十分確保して,交流したり,それぞれに自己評価したりして,新たな追究 に向かわせるなども考えられる。このようにして,言語を利用した協働的な学習 によって,グループごとに異なる学習内容を共有したり,相互に関係付けたりす ることが実現する。

(学習指導要領解説編p49-50)

 

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 パズルのピースがつながるように、少しずつ”近江町市場”というざっくりしたものが子どもたちにとって見えてきているように思う。子どもの反応やふり返りからそのことが分かる。特に、社会科における「店ではたらく人々」でも横断的に行ってきていることもあり、関連性が見えて来た部分がある。ただ、現時点では今後の展開に進むべき段階にまでは至っていない。全員の発表が終わり次第、共通理解をしっかりしたうえで、子どもたちとビジョンを共有していきたい。

 以下は、児童のふり返りの一部である。

  • 近江町市場に平均12000人の来場者数が来ているのが、地元の人だけではなく、観光客や飲食関係者も来ているとなると、その数字もありえるなと思いました。
  • ○○さんのシェフや料理店の人も買い物に来ているという発表におどろきました。きっと、すごくいい食材があるから来るんだろうなと思います。
  • 前回と今回の発表を聞いて、近江町市場の歴史やそれに関係する疑問が出てきました。特に印象的だったのは、近江町市場には唯一、お米屋さんがないということです。また、滋賀県の人(近江)がどうしてわざわざ作ったのかということも気になりました。このことを調べたいと思います。