社会とつながるリアルな学びの実現に向けて

本ブログの趣旨は以下の2点である。(1)社会とつながるリアルな学びを実現する授業の構想と整理の場の確立(2)社会とのつながりの構築

金沢からかみ団扇づくり①

 前回の記事で取り上げた内容のうち、金沢からかみ団扇づくりについて取り上げる。「金沢からかみ団扇づくり」と「アプリづくり」の同時並行で行っていたため、時間を遡っておっていく。

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 7月に登場していただいたオリンピック関連推進事業室の方から、金沢からかみのうちわづくりをゼロからデザインし、作成したものをパラリンピック水泳選手に送るという話をいただいた。近江町市場と直結した活動ではないので、お断りしようかとも考えたが、せっかくの機会だから何かうまく絡められばと思い、まずは教室に来ていただいた。

 子どもたちも反応は上々であったが(もちろんそうなるが)、数名が思った以上に乗ってこない。理由を問うと、「週に2時間、1年で70時間しかないので、こっちを思い切ってやると近江町市場のことができなくなる」という答えが返ってきた。迷うところはそこなんだよなぁと思いながらも、数人に考えを述べさせていく。そんな中、団扇の柄を近江町市場のものにすれば結局共通のことをしていることになるし、どこかでつながるかもしれない、という発言をした児童がいた。こっちもその展開を考えていたが、子どもから出てきたことには非常に大きな価値がある。大課題にはズレがあるように思うが、そのこと自体も何名かの子がふり返りに書いていた。いつかこのふりかえりを取り上げ、大課題にそのものに立ち返らせていきたい。

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 2週間ほどは別(アプリづくり)のことを行っていたため、少し間があいた。この日は、柄には何を取り上げるかを考えた。イメージマップを個人で書かせて授業で何を取り上げるかを考えた。重複があるとおもしろくないということで、全体で確認し、それぞれが取り上げるものを考えた。それぞれが思い入れのあるものをつくることになった。

 ただ、団扇にカニの絵が描かれていても近江町市場と直結することはない。活動終末でこのことに気づかせ、どうするかを考えていく展開を想定していたが、もうすでにこの段階でそのことに気がついた子が数名いた。「どうする?」と問うと、ロゴを入れればいいと返ってきた。最近は変に教師が水面下で考えなくても、ある程度のことは子どもたちがこちらも納得するカタチで進めていっている。それが非常にたくましい。以下は子どもの振り返りである。

  • 今回の授業で唐紙のうちわにどんなデザインを取り上げるか決まりました。自分が選んだ五郎島金時のデザインは表すことが難しそうです。なのでその物の写真を見て作りたいです。ルーブリックの一部考えるまでは出来ませんでしたが全員かぶるようなことはなかったので良かったです。
  • 今日の授業では、近江町市場の何をうちわの柄にするのかを考えました。また、それぞれがかぶらないようにもしました。実際に私も、乗せた柄を見て近江町市場を想像できるかどうか少し不安だったのですが、どのうちわにも“近江町”のマークをのせることになったので良かったです。

現状の打開策

 規定路線の決め決めで動いていないこともあり、総合の授業展開を完全に見通すことはできない。(既存のカリキュラムをなぞるだけのものは非常に容易であるが…)実社会とのつながりの中で、落とし所を水面下で探ったり、交渉をしたりすることが必要であるためだ。これまでの総合の中では、この時期までくると、「あ、協力しますよ」という【学校への協力】という段階から「じゃ、この際、何か一緒にやろうか」という【学校との協働】の段階にシフトするはずが、今年はなかなかそれが難しい。近江町市場が今が繁忙期であることと、組織がトップダウンではないことが原因であろう。もちろん、自分と関わってくださる方は、非常に熱い思いがあり、親身にいろいろ教えてくれるが、それと協働的に何かを行うことは別問題である。

 うすうすこのままじゃ、社会参画の取り組みを行うことは難しいということを10月から感じていながらも、どうしようかと考えていた。そんな中、時期は異なるが2件自分のもとに依頼があった。

 1件目は、1学期に来校いただいた、オリンピック関連推進事業室からの依頼である。金沢からかみの団扇を送ったが、それをあらためて、デザインの段階から子どもたちに考えてもらい、作って送ってほしいとのことである。

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 2件目は、全国選抜小学生プログラミング石川県大会に応募してほしいという某所からの依頼である。本学級で取り組んでいる活性化のアイデアの一つにあるアプリへの反応であった。

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 この2件に関しては、どちらも近江町市場の方の全面的な協力の中で実現していくものではないため、ある意味、現状の打開にはつながるとは思った。だが、それはこちら側の都合であるため、ここではどちらも即答することはやめ、子どもたちと相談することとした。この相談が非常におもしろく、ある意味、子どもの成長を強く感じた。それぞれの件の詳細については別記事で取り上げる。

目の前に現れる壁

(先々週の授業であるが、間に何をしていたかについては後日の記事で取り上げる。)

 子どもたちはアンケート結果の分析を行い、見出した課題の解決策を考えた。前回 、近江町市場振興組合の方に教室に来ていた段階から、考えたアイデアを聞いてもらおう!ということになっていたので、再度教室にお呼びし、自分たちのアイデアに対するフィードバックをもらおうということになった。同時に、「自分たちが考える前に、市場で働く人たちも子育て世代の地元客を呼び込むことはしているはずだし、それも聞かないと!」という発言もあったので、そのことについても聞くこととした。

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 この時間の振興組合の方からの話で、自分たちが考えたことはほぼすでにやっているという現実を目の当たりにすることとなった。さらに、いろんな組織を介しているため、一つの物事を進めることもいくつもの部署で検討されていくということもあり、自分たちがいくら提案しても現実化することはないという現実を知ることとなる。

 最初に登場していた段階で、「こんなことをやっている」ということを伝えてもらうことで、今回のような展開は避けられたかもしれないが、あえてこのような順序で授業を行った。(非常に迷ったが、そうせざるを得ない事情があった。)さらに、考えた4つのスタンプラリー、天井掲示、特売、アプリ作成のうち、アプリをのぞいて可能性は皆無であるというフィードバックをもらう。目の前にさらに大きな壁があらわれる時間であった。授業終末部では、暗い雰囲気が漂ったものの、ある子が「まだ、他に手はある!」という発言をした。名言システム(?)がクラスにはあるので、全員の承認を得て、名言化することとなった(名言化された場合、教室に掲示される)。

 最終的には、「他の方法を探す必要がある」、「アプリにはまだ可能性が残っている」ということを確認し、授業を終えた。こちらもどうしようかと思っていたが、明るい表情に戻りつつあったので、ほっと胸をなでおろした。ある種の、タフさがクラスに出てきているのかもしれない。以下は児童のふり返りである。

  • 何かをしてください、というのは無理だということが分かりました。これからは自分たちでできることを考えて実行することにしたいです。実際に行うことは時間の問題できなくても、話題になるようなことをすればきっと、お客さんは増えると思います。

子育て世代の地元客を呼び込むアイデア

 2週間分まとめて掲載する。子育て世代の地元客を呼び込むアイデアを検討した。黄色が児童が考えたアイデアである。視察があった授業であったため、指導案も記載する。

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 参加者の方からは「子育て世代」というキーワードを子どもはどの程度理解しているかというご指摘と、通販というアイデアは呼び込むことにはならないのではないかというご指摘をいただいた。双方ともに、そうだなぁと思い、前者は翌日、子どもたちに問うてみた。以前、GTの方から丁寧に何度も説明があったからか、ここは共通理解ができていたように思う。発達段階を考えると、イラストを貼っておくのがよいのではというアドバイスもいただいたので、次の授業からイラストを掲載した。また、後者に関しては機会を見て突っ込んで考えていく必要がある。別の機会に取り上げることとした。

(少し時間が開いてしまったのは、総合の本流とは異なる展開について子どもたち話し合っていたためである。ここは別の記事で取り上げる。)

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 前回出たアイデアの中からさらに具体的に絞っていく。既にやっていることや、自分たちでは到底無理なことではあるが、現時点ではこれでよい。GTの方にアポを取り、教室に来てもらった際に、フィードバックをもらい、そこからまた考えていきたい。以下は授業のふり返りである。

  • 子ども連れがきびしいというのであれば、天井にやはり何かを掲示していくような取り組みがいいなと思いました。子どもが行きたい!と言えば、親も連れて行くはずだし、そこで掲示された情報を見て楽しいなと思うようになるはずだからです。
  • アプリを作れば、いろんな問題が解決すると思いました。スタンプラリーもできるし、いろんな情報がわかるし、また、せっしょくを避けることができるので、いまにぴったりだと思います。


 

アイデアを生み出す方法

 前年度の実践の課題をどう打開するかということをじっくり考えてきたが、そのパズルのピースが2週間ほど前に全てつながった。タイミング的にも今がちょうどいいと思い実践した。本筋の授業とは異なる展開に1コマ(+家庭学習)時間を設けた。

 前年度もこの時期あたりから、町家でどのような体験ができるかについてアイデアを出していった。出てきたアイデアについてはおもしろいものが多くあったが、そもそも偶発的なものが大半を占めていた。つまり、アイデアを生み出す方法については別段示すことなく、子どもたちに全てを委ねていた。何らかのアイデアを生み出す方法や法則が示せていればもっと違ったアイデアが出てきていたのではないかと悶々としていた。だが、アイデアを生み出す方法などそもそも自分が習ってきていないので、こういうものはあるのかと2ヶ月程度書籍を当たってきた。様々な書籍の中で、以下が非常に参考になり、これを授業のベースの一つとして子どもたちに示すこととした。

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※書籍を参考に作成

 ただし、これを示すだけでは児童が具体的に考えることはできない。ずっと、この考え方を具体に落として考える事例がないかを探していたが、ある時、Facebookのタイムラインのニュースで取り上げられていたものが目に止まった。東京の老舗銭湯がリニューアルしたというニュースである。

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黄金湯が行ったこと

  1. バーカウンターの設置「たし算」
    従来の牛乳や瓶コーラなどの飲み物加え、アルコールを置く
  2. 壁絵の変更「ひき算」
    典型的な銭湯のゴージャスな壁絵からシンプルな富士山絵巻に変更
  3. 宿泊施設「かけ算」
    異なる領域(銭湯と宿泊)をかけあわせる(現時点では未実施)
  4. DJカウンターの設置「わり算」
    ラジオからDJブースへ(ラジオなどのレトロなものを逆転)
    ※ここがちょっと苦しかったかもしれないが…

 この事例をもとに授業をすることとした。まず、四則演算に基づいてアイデアを生み出す方法を示し、その後、黄金湯が4つのアイデアのうちどの方法で客数を増やしたと思うかと問うた。この時点では、正解が4つであるということは述べていない。どれを行ったかについて議論する中で、そのアイデアの奥にあるターゲットの存在に気づいていくこととなる。これもねらいとしていた。近江町市場を活性化するアイデアを考える際には、ターゲットのことを考える必要がある。このことに気づいてほしかった。あーでもない、こーでもないと議論しながら、授業はオープンエンドとした。

 そして週明けに、黄金湯のニュースを視聴した。「結局、答えは全部だった」というオチもあり、子どもたちの心には深く刻まれたようだ。この四則演算の考え方を今後、生かしていってほしいと考えている。

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児童のふり返り

  • イデアを生み出すことについて知りました。もしネットですぐ調べていたら、どうしてそうなるのかということを考えていなかったと思います。(途中略)今回みたいに考えることができたのは式のおかげです。それとみんなで考えたからです。これからもこれを使っていきたいです。
  • 今回は、アイデアを考える時、「+−×÷」を使えばいいということを学びました。先生が答えを教えてくれると思ったのに、「来週いいまーーす」と行った時、ちょっといらっとしました。答えは何なのか、休みにじっくり調べました。

 

理由の検証

 どっぷり学習で浸かっていることもあり、本学級の子どもたちは近江町市場が大好きである。「なんで行かんのかが分からん!」という発言があったように、素朴に観光客数の方が多いということについて強く疑問に思っているようだ。

 そこで、地元客近江町市場にあまり地元客が行かない理由を洗い出すこととなった。先週の授業の最後に、どうやって調べるかを話し合ったところ、「このまえ、社会の授業の時に取ったアンケートがあるやん!」という発言が出た。社会における販売の授業の最後には、「やはり、近江町市場ではたらく人々は多くのお客さんに来てもらうためにたくさんの工夫をしていた」とまとめた際に、「でも、うちのクラスでは全く行っていない!」という発言から、単元導入時のアンケートに立ち返り、「行かない理由を調査してみよう!」ということになっていた。

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 質問項目は、「どうして近江町市場に買い物に行かない理由は何か」である。子どもがおうちの人が行かない理由を考え、自由記述形式ではなく、選択式(複数回答可)のもとGoogleフォームでアンケートを行った。このアンケート結果を授業で確認した。

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 結果、「遠い」、「そもそもあまり知らない」が上位を占めていた。授業参観であったこともあり、参観していた保護者の方にここにはない思いを語ってもらった。また、授業最後には、以前の日記の中で、「アンケートだけ信じたらだめだと思います」と書いていた子を指名し、その理由を全体で共有した。その理由は、(1)おうちの人の数だけだから少ない、(2)自分たちが考えたもの以外の理由もあるかもしれないというものであった。

 翌日、隙間時間を使ってどうするかを話し合ったところ、自由記述のアンケートを取ることとなった。学校長に許可を取り、学年保護者にアンケートを取りに行くようなアイデアが出るなと思っていたが、これはその通りだった。ただ、そのあとで、「数がほしいんだったら、おうちの人に言って友達に広げてもらったら早いと思う。」という意見が出た。子どもだけでなく、自分自身も、乗ってみるかと思い、その案でアンケートを取ることとした。アンケート作成チームをつくり、細々としたことを休み時間に終わらせた。コケることも大切なので、「そこまで集まらなかったら、また次の方法を考えようね」と伝えていたが、結果的に2日で72件も集まった。次回はこのデータの分析を行う。(なお、子どもの保護者より外に出るということを考え、振興組合理事長の許諾は得ている。)

 子どもたちが真剣になって、「自分たちなりに何かできることはないか」という思いのもと取り組んでいるので、こちらもできる最大限のことはやっていきたい。

大目標の達成と達成のための道筋

 今年度はスタートが約2ヶ月遅れたこともあり、先週やっと大目標の設定とその目標達成のための道順を共有することができた。

 特に学習計画を考える際には、こちらの想定をはるかに超えてきていた。昨年度の総合のことを引き合いに出し、発言する児童が多く、思わずこっちも舌を巻いた。

 「みんなは一生懸命考えているけど、市場の人にとってはいわゆる外野が勝手に言ってることだから、承諾は取らないといけないし、それが筋だ」ということを後半に伝えようと思っていたが、このことは4年児童から出てきた。まずは、市場で一生懸命はたらいている人に自分たちの思いを知ってほしいとのことである。

 子どもたちには、言ってはいないが、彼らの純粋な思いと市場で実際に働く人にギャップがあるかもしれない。この点は本当に未知数だし、最大限配慮が必要だと思う。この点が今年の授業で特に難しい点の一つである。

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大目標

これまで近江町市場にあまり行っていなかった地元客を呼び込む、そして盛り上げる

学習計画

  1. なぜ地元の人が近江町市場に来ていないかを明らかにする
  2. これまで近江町市場が地元客に来てもらうためにしてきたことを調べる
  3. イデアを考える
  4. 許可をもらう
  5. 実行する

ふり返り

  • 目標に向けてこれから頑張っていこうと思いました。個人でどんなことをすればいいかアイデアを出し、似ているメンバーで集まったり、相談しながら最後には近江町市場の振興組合やビジョン委員会の方にプレゼンしたいです。
  • 目標達成のための道が見えたので、一安心しました。次は、(社会の時にとったGoogleフォームでとった)保護者アンケートを確認して、地元客があまり来ない理由をはっきりさせたいです。