社会とつながるリアルな学びの実現に向けて

本ブログの趣旨は以下の2点である。(1)社会とつながるリアルな学びを実現する授業の構想と整理の場の確立(2)社会とのつながりの構築

各グループにおける活用アイデアの詳細

 以下が、子どもたちが現在、考えている活用アイデアの具体である。

  • 染物チーム
    元染物屋であるということを考慮した結果、染物体験をすることを提案することとなった。夏休みに染物体験をした児童が2人いるため、提案が非常に具体的である。また、金沢らしさを出すために、加賀野 菜を使った染物をすることを現時点で考えている。
  • 伝統作品づくりチーム
    様々な石川県の伝統工芸品の中から加賀繍を選択し、加賀繍体験を提案することとなった。加賀繍を選んだ理由は、加賀繍の体験はあまりなく珍しいからである。単に加賀繍作品を作るのではなく、加賀繍に シールやワッペンなどの貼る要素を加えることによって、新しさを出そうとしている。シールだと自分の好きな ものに加賀繍を貼ることができるため、その点が既存の市場と大きく違うと考えている。
  • 料理作りチーム
    料理体験であれば簡単にできるし、観光客に興味をもってもらえると考えた。すでに谷口さんが やっていることから、加賀野菜だけではだめだということに気がついた。そこで、すでにあるものに見た目のは なやかさをプラスするというアイデアを持っている。皿などに伝統工芸品や金箔などを使うことを考えているが、 これはすでにやっている。すでに IN KANAZWA HOUSE でやっているが、それゆえにアップグレードしやすい と思っている。
  • シルクスクリーンチーム
    トイレにかざってあったシルクスクリーンに興味をもち、シルクスクリーン体験を提案することになった。金沢でシルクスクリーン体験をしていることはないことに加え、金沢城兼六園などの金沢らしいも のを作成する絵柄にすることで、金沢らしさを出そうとしている。ただ、どのようなものを作るかについては工 程イメージが十分ではないため、T シャツ、バック、タオルなど様々である。
  • 唐紙チーム
    2階にあった金沢唐紙に興味をもち、唐紙体験を提案することになった。唐紙体験は金沢ではないからオリジナ ル性もあると考えている。さらに、絵柄は金沢に関するものとし、うちわ、ちょうちん、はがきなどを考えてい る。だが、具体的にどんな体験になるかについて具体的なイメージをもっていない。
  • 昔体験チーム
    様々な昔体験を考えていたが、金沢らしさを表現することができずに提案に苦しんでいた。だが、校長室にある 金沢だるまを見つけたことをもとに、だるまづくり体験を行うことを提案することとになった。だるまづくりは金沢めんやですでに体験ができるが、そこにはない売りとして、だるまの背面に金沢に関する柄 を選択して書くことができることをウリにしようとしている。
  • 和菓子づくりチーム
    町家と和菓子という組み合わせが非常にマッチすると考え、和菓子づくり体験を提案することになった。3人グ ループ。すでにやっていることころがあることは分かっており、他と差別化のため、石川の伝統工芸品を使った 皿を用いたり、持ち帰り用の箱を工夫したりするなど、+αを模索している。

【10月17日】プレゼンの構成を考える

 それぞれのグループでプレゼンの構成を考えることを行った。「プレゼンでどんなことを伝えるといいのか」と冒頭部分で問うたところ、多くの意見が出されたものの、結果的に「体験の内容」と「それを提案する理由」の2つに分類できた。4年生は昨年度からの指導もあり、構成=ピラミッドチャートという印象が強く残っていたようである。ここは想定通りだが、本時でも活用することとした。ただ、昨年度の研究授業で「ピラミッドチャートの活用が間違っているのではないか」という指摘があったので、自分の中でのシンキングツールのバイブルであらためて確認を行った。検討の結果、今回は基本に忠実な活用の仕方であるのでこの点については、問題ないように思う。

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 だが、今回は個人でそれぞれの項目に何を述べるというかという点でつまづきがあった。総合の授業で調べたことを、整理すればいいだけであったが、それができていなかった。おそらく、総合ノートに記述された大量の情報から、どの要素を取り出すのかというところでつまづいていたのではないか。となると、同様の場面で授業をする際には何らかのスモールステップが必要であると言える。

 ちなみに、個人思考後の共有場面では、以前の国語の授業(本ブログでは取り上げていない)で確認した話し合いに必要な要素を意識させて話し合わせた。個人での状況が微妙だっただけに心配をしていたが、メンバー間で相談していく中で最終的には何とか形になった。

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 次時では、構成をもとに実際に具体的な言葉を考えていくこととする。ただ、構成をもとに原稿を書かせてしまうと、プレゼンではなく単なる音読になるため、この「話すこと・聞くこと」領域ではその癖をできるだけつけさせためにも、極力原稿を書かせることは避けていきたい。

 また次回以降、子供たちがどんなことを考えているかということを、振り返り中心に取り上げていくこととする。

【10月15日】提案するアイデアの弱い部分はどこかを考える

 子どもたちの考えた現時点でのアイデアについて、滋彦社長に見ていただいた。アイデア選定の観点(①金沢らしさがあるか、②オリジナル性があるか、③ニーズはあるか)とそれぞれのアイデアに対する現時点での評価を端的に示したスライドを作成していただいたので、全体で共有することとした。

 だが、いきなり評価を与えるのもおもしろくないと思ったので、まずは、選定の観点を示した。ニーズまで考慮させるのは難しいため、①と②を今回は取り上げた。今の自分たちのアイデアの弱いところについてそれぞれのグループで考えさせた。その後、滋彦社長のスライドを投影したところ、「やっぱり」や「そうなんだよな」というつぶやきがいたるところから聞こえてきた。自分たちで感じていることを、他者にも指摘してもらうことで一層なんとかしないといけないと思うようになる。それゆえ、いきなり評価を与えるのではなく、一度自分たちのアイデアを見直すという1クッションをはさんだ。そのことを踏まえて、それぞれのグループで課題を設定させ、今回もアイデアを練る時間とした。そろそろ時数的に、次のステップに行きたいが、あと少し待つこととしたい。ただ、全体を通して非常に精度は高まっている。ある程度、形になった段階でそれぞれのグループの詳細をここにアップすることとする。

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【10月11日】各グループの課題を調べる

 国語科「話すこと・聞くこと」領域における題材収集として、プレゼンのために必要な情報の収集を行った。前回の記事でも取り上げたように、各グループで取り組む内容が異なるため、新着状況の把握をしなければならない、その見える化のため黒板に現在取り組んでいることを書かせることとした。なお、現時点では本ないしは、インターネットをもとにそれぞれの課題を調べている。

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 以下では、2つのグループを例にあげ、どんな課題に取り組んでいたについて述べる。

  1. 染物チーム
     まず、<染物にはどんな作り方の種類があるか>を調べていた。その中から、体験として簡単にできそうな玉ねぎ染めに着目し、他にも簡単にできそうな野菜を使った染物はないかを確かめることとなった。<たまねぎ以外にどんな野菜をつかった染め方があるのか>ということを調べ、なす、にんじんなど色のついた野菜を使っても簡単にできるということを見出していた。その報告を受け、「全国どこでもできる体験ではな意味がなにのではないか」と述べたところ、「加賀野菜を使って染物できんかな」というアイデアが出たため、加賀野菜で色がついているものはないかを調べている。
     加賀野菜を染物にということは全く想定していなかったため、その発想を大切にしてあげたいと思い、本当にできるのか?ということは口に出さなかった。あとで調べてみると、前例がすでにある。

  2. シルクスクリーンづくりチーム
     まず、<シルクスクリーンはどのように作るか>を調べていた。その後、<どんな作品があるか>を調べ、Tシャツ、絵、タオルなどのグッズを作れるということを明らかにした。その後、どのグッズを作る体験にするとよいかということを現在は話し合っている。この流れは、唐紙づくりチームもほぼ同様の流れで学習を展開させていた。

 課題について家で調べてきたり、関係する資料を持ってきたりしている子が多いことから、展開が驚くほど早い。資料集めに時間がかからないということは、非常に大きな強みである。ただ、インターネットの検索については、一度どこかで確認しておく必要がある。検索になれている子は、キーワードで検索しているが、中にはそうでない子もいる。また、ソースを元に信頼できる情報なのかということについても取り上げたい。

 ちなみに、メールで質問をしたいというグループもこの時間に見られた。このブログでの報告も含め、全て教師が担当するのは時間がかかってしまう。せっかくICT環境が整っているので、子どもたちが外とのつながりを確立できるような何らかの工夫をしていきたい。

【10月10日】各グループごとの課題をもつ

 子どもが考えた12の体験アイデアの中から、7つにしぼった。山田滋彦社長と相談の上、無形のサービスとなる「方言」、「クイズ・スタンプラリー」及び、差別化が難しい「茶道」、そのものの活用が難しい「庭をつかった体験」をアイデアから除いた。子どもの希望調査をもとにグループ分けをし、グループごとに学習を展開させていくこととした。また、その際に、プレゼンには「具体的に何をするか」、「それをするとどうなるか」が必要であり、それに必要な情報を収集していかなければならないということを伝えた。それからは、各グループで課題を見つけ、課題解決に向け、各自で進めていた。正直、全グループでこのような課題が1時間目から出るとは思っていなかった。内容もこちらが舌をまくものも複数ある。課題を独自で見出していた2つのグループを全体で紹介したことがよかったのであろう。

 また、板書はざっくりとした思いつきで書いてしまった。次回には各グループが何に取り組んでいるのか、新着状況はどうなのかを何らかの形で把握できるように板書に位置付けることとする。

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 また、授業後に話を聞いたところ、家で調べてきたいという子どもが多数いた。その意欲を持続させるためにも、週2の授業だけではなく朝自習に総合に関する時間を設けるなど工夫が必要である。

【10月7日】町家活用アイデアの共有

 町家見学を経て、自分たちで考えたアイデアを共有した。12個のアイデアを全体で確認できた。ここから、自分が取り組みたいアイデアの希望のもと、グループを構成していく。そして各グループでは、(1)(2)(3)について考えさせていくこととする。なお、話すこと・聞くこと領域の題材としているため、国語科における題材収集の授業として位置付けている。

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授業力向上ゼミ・今後の方向性について

 金沢大学授業力向上ゼミでこの取り組み及び構想について発表を行い、たくさんのご意見をいただいた。以下のスライドが自身の総合の授業づくりで大切にしていることを端的に表したものである。このことを念頭に起き、これまで実践に取り組んできた。ただ、これからの授業展開について整理すべきことが多く出てきたので、ここで整理しすることとする。

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自身の総合における授業観

 これからの展開は、以下のように考えていた。

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今後の方向性

 まずは、見学してきた町家の活用アイデアについて考える。ただ、先日の見学終盤に山田社長から、「町家を体験の場として活用する」という条件を提示してもらったため、その条件に基づき、ここでは子どもの純粋なアイデアを大切にしていく。つまり、どこをターゲットとするのか?そもそもどんな課題を解決するための体験の場なのか?といった点については、Step4では子どもたちに求めない。この点についての指摘は、山田社長からプレゼンを見た講評の中に位置付けてもらい、その中に事業化していく際のビジネスモデル(子どもたちが理解できる表現に落としたもの)を提示してもらおうと考えていた。ただ、参加者の中から、このStep5が子どもにとって、難しく、純粋なやりたいという意欲が減退していくのではないかというご指摘をいただいた。個人的には、このモデル提示こそ、子どもたちが主体的に学びを進めていく指針となると考えていたのだが、修正が必要であるということが分かった。

 具体的な改善策として、「何度もプレゼンを繰り返し、アイデアの質を高めていく」ということを代替案として提示してもらえた。確かに、これならば、無理のない範囲での展開が可能である。プレゼンを見せる相手を毎回変え、得られるフィードバックからさらなる課題が見つけ、その課題解決に向け、主体的に学びを進めていくという展開としたい。ただ、見てもらう相手をどうするのか?どんな切り口でのフィードバックをしてもらうのか?など、さらに内容を詰めていかないといけない要素が多々ある。この点については、現時点で明らかになっていないため、引き続き検討していくこととする。