社会とつながるリアルな学びの実現に向けて

本ブログの趣旨は以下の2点である。(1)社会とつながるリアルな学びを実現する授業の構想と整理の場の確立(2)社会とのつながりの構築

【11月17日】実現が可能か専門家に聞く

 それぞれのグループで、自分たちのアイデアが実現するかどうかを専門家から聞き、新たな課題を見出していくという授業展開を考えていた。研究発表会用に指導案を書いていたので、以下に添付する。

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 それぞれのグループで新たな課題を見出していた。例えば、染物チームの場合、思った以上に金時草では理想とする色が出なかったこと、大量に野菜を消費することになることを課題として見出していた。この部分については、比較的同様のことが他のグループでも見られたことから、GTをお招きしてよかったと思う。

 ただ、目の前に専門家がいることもあり、聞きたい、したいという気持ちが強いため、どんどん話し合いがズレているところもあった。この点については、もっとキレイに進めていってほしいと考えていたが、純粋な子どもの反応なのだろう。それを事前に把握しておかなかったところは微妙であった。

 次時はグループで活動する前に、それぞれのグループで悩んでいることを共有するところからはじめていきたい。

【11月14日】授業の隙間時間

 総合的な学習の時間は週に2回しかない。週に2回では、子どもたちの学習に対する意識はやはり途切れてしまう。そこで、今年度は、週に2日間の朝自習の時間を総合に関する内容で各自が取り組む時間を設定している。(これは高松の河田祥司先生に教えていただいたことをもとにしている。)また、iPadが全員分届いた10月中旬以降は休み時間でも学習に必要なことであれば、iPadを自由に触ってもよいということとした。なお、それぞれのグループにメールアカウントを付与しており、必要に応じて専門家の方にメールを送ってもよいということにしている。(この布石は9月に行っている。以下、記事)

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 現時点では、どのグループもこれでいいのか自分たちのアイデアが実現できるかどうか判断がつかないという状況であるため、以前来てもらった専門家の方に答えてほしいと考えている。「メールで来てもらうようにお願いしてもいいですか?」という声を受け、教師が文面の確認したのち、4つのチームは、専門家に来て欲しいという依頼メールを送っていた。「自分たちが依頼して来てもらった」という感覚を大切にさせたかったため、事前に専門家への根回しは済んでいるが、そのことは伏せてある。なお、残り1つのチームに関しては専門家の方がアドレスを所有していないため、電話で交渉を行った。

 実際に、教室に来てもらえると答えてもらった時には、グループメンバーで手を取り合って喜んでいた。このように自分たちで学びを創り上げているという感覚を総合の授業では大切にしていきたいと考えている。

 さて、専門家をお招きし、自分たちのアイデアにツッコミを入れてもらう場面で、彼らにどんな気づきがあるのか非常に楽しみである。

【11月12日】体験の具体を考える

 第2回のプレゼンは、「①ターゲットを明確にして」、「②具体的な内容を提案する」ということをプレゼンに盛り込むことを以前、滋彦社長は子どもたちに伝えていた。だが、熟慮の末、①ターゲットを明確にするということは今回のプレゼンの条件から外してもらうよう滋彦社長に打診した。ターゲットを考えるあまり、体験の内容について考えなくなってしまうことからねらいと外れることを懸念したためである。やはり、現段階では、「具体的な内容について考える」ことに重きを置きたい。そこで、今回は、2コマ続きの授業で、各チームが第2回プレゼンに向けて、体験の具体的な内容について考えていった。

 チームごとに、課題を設定し、課題について話し合い、解決したらまた別の課題を設定していくというこれまでの流れを今回も取り入れることとした。

 なお、「分からなかいところがあるから専門家に聞きたいから連絡先を教えてほしい。」と「具体的なイメージを描きたいから画用紙がほしい。」という発言を受けた。このようなことを積極的にさせたいので、大きく褒め、他の班もどんどんやればいいという内容の話をした。

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 以下ではそれぞれのチーム状況を取り上げる。

【染物チーム】

 複雑なものを染めるのは難しいということで、シンプルにタオルとハンカチを染めることとなった。また、金沢らしさを出すためには加賀野菜を使って染めればよいという以前のアイデアを出していたが、本当に染めることができるのかは自分たちでは分からないという結論に至った。そこで、専門家の方にメールを送ろうということになった。文章を考えた後には、どのような染物をイメージするかを画用紙に書いていた。

【伝統作品づくりチーム】

 加賀繍は繊細だし、難しいからということで、何を作るかについて紛糾していた。時間をかけないと大きなものは作れないということで、小さな柄を作ることで意見が一致した。具体的に何を作るかについては、紆余曲折を経て、のれんを作ることとなった。のれんづくりはどこもやっていない、家でも使える、加賀繍も目立つという理由だそうだ。その後、一人一台のタブレット環境があるので、メモ機能を用いて、具体的にどんなのれんがいいかを描いていた。


シルクスクリーンチーム】

 染物チーム同様に、複雑なものは避けた方がいいということで、Tシャツに決まった。金沢らしさを表現するには、柄しかないということで、どんな柄だと金沢らしさが出るかについて長い時間話し合っていた。結果、「金沢城」、「鼓門」、「ことじとうろう」を柄とすることとなった。その後、「具体的に描きたい」ということで、画用紙を配布し、具体的なデザインを考えていた。完成後、ある子は、「これだと版作るの難しいけどできるんかな」とつぶやいていた。このつぶやきを拾って、これを起点にグループでの学習を展開していきたい。

【唐紙チーム】

 以前、専門家から作ることができると言われた候補の中から、帽子、バック、うちわに柄をほどこすこととした。また、このグループのメンバーの一人が自宅で加賀五彩という色を調べてきており、これらの金沢らしい色をベースとしたものを作るということが決まっていた。その後は、画用紙に具体的なイメージを描いていた。

【和菓子づくりチーム】

 誰にでもできそうなものがいいということを考慮し、上生菓子を作ることとなった。どこにでもある上生菓子にどんなオリジナル性を出すかについて、それぞれの考えを述べあっていた。加賀野菜を用いる、金沢らしい模様をつける、あんこの味を工夫するなどそれぞれの考えをもとに、授業終末場面では、どんな上生菓子ができるかを画用紙に描いていた。

 

【11月5日】専門家の方への質問【11月6日】情報の整理

 11月5日には、それぞれのチームの方に専門家をお招きし、体験アイデアを具体的に考える上で聞きたいことを質問する時間を設けた。また、11月6日には、その学んだことを整理する時間を設けた。本記事では、それぞれのグループにおける両日の詳細について述べる。なお、その際には、現時点で子どもたちがどんなことを考えているか、具体的な記述を取り上げる。

<伝統作品づくりチーム>

 加賀繍を実際に体験させてもらえた。そもそもの工程でどんなことを行うのか、材料は何か、時間はどれだけかかるのかということなどを具体的に聞いていた。

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  • 本当に複雑で難しいから、体験にあった簡単なものを準備しないといけない。
  • 難しい技術にしたら、時間がオーバーしてしまうので簡単にできて、かわいいものを作るようにしたい。

<金沢からかみチーム>

 金沢からかみの定義を知り、からかみを作成する際の工程などについて質問していた。また、絵柄を作成する手順を実際に体験していた。

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  • 時間がかかってしまうから、この部分についてみんなで考えないといけないと思った。
  • がらと色も、金沢のものならなんでもいいけど、その中から、しぼってなににするかを考えようと思いました。
  • 時間はないんだけど、刷るという体験はした方がいいと思った。

<和菓子体験チーム>

 食品を扱うチームであるため、体験はなかったが、その分、アイデアについて具体的に考えることができていた。

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  • 「あんこ」に色をつけたり、「季節」にあうものを使ったりするのはいいと思いました。
  • あんこについては、加賀野菜を使うことで金沢らしくなると思うし、自分の好きな味のあんこが選べるから、自分のオリジナル和菓子を作れるようになると思います。

<染物チーム>

 草木染めを実際に体験させてもらえた。また、それぞれの工程でどんなことを行うのか、材料や必要なものは何か、時間はどれだけかかるのかということなどを具体的に聞いていた。

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  • 社長が言っていたターゲットについては考えていないということに気がつきました。このことについて考えないといけないと思いました。
  • かかる時間はものによって違うけど、(体験をしてもらう前に)先にやっておいた方がいいこともあると思いました。

シルクスクリーンチーム>

 草木染めチームと合同で展開していった。実際に、シルクスクリーンの体験をしながら、材料などについて質問していた。

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  • 着ている服がよごれてしまうと大変だから、よごれないような工夫が必要だということがわかりました。
  • 柄を全て自分で作ってもらうのは時間がかかるから、いくつかの中から選んでもらうことが必要だなと思いました。
  • 体験のために必要なものを準備しておくことが必要だと思いました。

 

 

 

【10月31日】専門家に聞きたいこと

 10月29日には、これからの方向性を確認することを行った。その際には、滋彦社長のコメントをもとに、次回のプレゼンではどんな内容を盛り込むことが必要かを確認した。ここでは、1)ターゲットを明確にすること、2)体験の詳細を述べることを条件として与えた。なお、条件の提示だけでは具体的なイメージがつかないため、滋彦社長にIn Kanazawa Houseで行っている手鞠寿司づくり体験のコンセプトシートと活動の概要をHPで紹介した。また、授業終末では「体験の具体を考える際に専門家の方をみんなに紹介する」と言う滋彦社長の言葉を取り上げ、実際に来てくださることになったことを伝えた。教室中にひびきわたる歓声が広がり、それと同時に、質問を考えておきたいという意見が飛び交った。それを受け、次の授業では専門家の方にする質問を考えることとした。

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  10月31日の授業では、それぞれの専門家に聞きたいことを各グループで整理させた。次回のプレゼンで伝えるべき2つのことがはっきり子どもたちが意識していることが彼らの発言から分かった。また、授業終末には、どんなことを専門家の方に聞くとよいかについて、共有した。詳細については、次の記事で取り上げる。

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社会とつながる実践で学べること

 以前の記事で自身の教師哲学について述べた。

koufuku54.hatenablog.com

 今回もやはり、子どもたちの姿から、社会とつながる実践のよさを感じたので記事にまとめておくこととする。

 現在の子どもは、空き家そのものではなく、「山田滋彦社長に対して、自分たちが考えた町家での体験メニューをプレゼンし、実現してもらう」ということに意識が向いている。(最初の空き家と違うじゃないかというご指摘もあるが、今はこれでも最後に戻せばいいと考えている。)

 子どもたちは真剣に取り組んでおり、プレゼン前日や当日の朝は休み時間にも関わらず、メンバーで声を掛け合い、自主的な練習に取り組んでいた。その中で、真剣に取り組んでいるがゆえに、グループメンバーと意見が対立することも多々ある。実際に、今回うまく話し合いが進まなかったり、泣き出す子がいたりしたグループも見られた。語弊があるかもしれないが、こういうことが、彼らにとっての学びになると考えている。あくまでも見守ることをベースにしながら、それでも問題がある時にはそれぞれの言い分を聞く中で、今後どうしていくことを考えさせてきた。対立があったとしても、「山田滋彦社長に対して、自分たちが考えた町家での体験メニューをプレゼンし、実現してもらう」という共通の目的があるので、多少のことは乗り越えられるのだ。

 社会に出ると、こういうことはざらにあり、いかなる場においても合意形成していくことが必要となってくる。このようなことを、小学校段階から経験させていきたいが、そこには、やはり何のための学習なのかを明確にし、共通のゴールを子どもたちが持っておかねばならない。そのためには、今回の実践のように社会とつながるようなリアルな場が必要である。そういう意味で、この授業を行うにあたり、多くの方に関わってくださっており、非常にめぐまれている。この点については、本当に感謝しなければならない。

 以下は、プレゼンの構成を考える時に、もめていたグループにいた子のふり返りである。うまくいかなかった経験をもとに、次につなげようとしていることが分かる。今後もこの子のように、多くの子に学びが得られるような授業を作っていきたい。

  • 自分が司会の時は、みんなの意見をまとめようとして進めることができました。でも、司会じゃない時に、話の割り込みをしてしまい、それでみんなの意見がバラバラになりました。それがダメな点でした。でも、その次の授業では、みんなが満足する話し合いにするため、さりげなく司会を助けたり、みんなと話し合おうと心がけたりできたのでうまくいきました。次の学習でも、意見を言っている途中に何かを言うのはやめたり、助け合ったりすることを忘れずにやっていこうと思います。

【10月24日】プレゼン本番

 山田滋彦社長に来校いただき、プレゼンを行った。プレゼン後、滋彦社長が質問し、子どもたちが質問に答えていた。活用アイデアのうち、実現性の高さから【染物チーム】、【伝統作品づくりチーム】、【シルクスクリーンチーム】、【唐紙チーム】、【和菓子づくりチーム】が選出され、残念ながら【料理作りチーム】、【昔体験チーム】が不選出となった。

 

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 このようなコンペ形式の授業では、全ての児童が報われるわけではないので批判されることがあるが、社会に出るとこのような経験は数多くある。報われなかった子へのアフターフォローさえしっかりすれば、全く問題ないと思う。授業後、じっくりふり返りを見ていたが、どの子どもにとっても大きなプラスとなっていたと感じた。以下で、選出されず一番悔しがっていた子のふり返りである。単に、悔しいで終わっているのではなく、理由を自分なりに解釈し、前に進もうとしていることが分かる。

  • 今まで精一杯やってきました。チームのみんなも最善を尽くしてくれたのではないかなと思いました。結果は不合格で採用されませんでした。くやしかったです。社長は良いところと悪いところを両方教えてくれました。(途中略)そして、悪かったところは、オリジナル性を出してきれていなくて、くわしくできなかったというところです。私は、この失敗をいかして、次は他のグループの人たちのものと一緒に実現に向けてがんばって取り組もうと思います。

 なお、この後の展開として、滋彦社長から「①すでに(それぞれの体験について)やっている人から具体的なことを聞き」、「②体験の詳細を考える」ということを道しるべとして示してもらった。この2つをもとに展開していきたい。